コーギーと聞くと、尻尾のない丸々としたお尻を思い浮かべるかもしれません。しかし、この特徴は生まれつきのものではなく、多くの場合、人間によってしっぽが切り取られています。
コーギーは、古くからしっぽを切る習慣がありましたが、最近では動物愛護の観点から、この慣習に再考が求められ、しっぽをそのままにすることも増えています。
本記事では、コーギーがしっぽを切る理由と時期について詳しく説明します。
コーギーとはどのような犬種か
コーギーは胴長短足で、大きな耳が特徴的な中型犬です。その愛らしいぷりぷりとしたお尻も魅力の一つです。原産国のイギリスでは、牧畜犬としてその能力を発揮していました。
コーギーにはウェルシュ・コーギー・ペンブロークとウェルシュ・コーギー・カーディガンの2種類が存在します。ペンブローク種は「ごく短いしっぽ」または「しっぽなし」が一般的で、カーディガン種は「長いしっぽ」を持っています。日本では特にペンブローク種が多く飼育されています。
ペンブローク種のコーギーには、生まれつきしっぽが短い「ナチュラルボブ」と呼ばれる個体も存在しますが、多くの場合、しっぽのないコーギーは、幼い時に人工的にしっぽが切り取られています。
- コーギーには、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークと、カーディガンの2種類がいる
- 日本にいるコーギーの9割以上(推定)は、ペンブローク
- ペンブロークには、尻尾を切る文化があり、カーディガンにはない
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのしっぽが切られる理由
「なぜ、しっぽを切るのか」と思いますよね。コーギーの断尾は、牧畜犬として活動する際の安全を確保し、怪我を防ぐ目的や、長い歴史的背景に基づいて行われてきました。
牧畜犬として働くため
コーギーが元々牧畜犬として使われていたため、長いしっぽは走る際に障害になることがあり、また家畜に踏まれたり噛まれたりする危険も伴っていました。
特に牛の群れの中でしっぽを踏まれてしまうと、動けなくなる可能性があり、小さな体のコーギーには大きなリスクになります。そのため、安全を確保する目的でしっぽを短くすることが一般的でした。
キツネと間違われないように
コーギーが断尾されるもう一つの理由として、キツネと間違えられることを避けるためという説があります。コーギーはその黄金色の毛とふさふさしたしっぽ、大きな耳がキツネに似ており、狩猟中に誤って銃で撃たれる危険性がありました。そのため、しっぽを短くして狐ではないと分かりやすくしたと考えられています。
この措置は、狩猟が行われていた地域や時代において、コーギーの安全を守るために考えられました。
税金対策
かつてイギリスでは、しっぽのある犬に対して税金が課せられるという法律がありました。この法律の影響で、様々な犬種のしっぽが切られるようになりました。コーギーもその犬種のうちの一体と考えられます
衛生面を考慮して
衛生的な理由や迷信に基づいて断尾が行われることもありました。牧畜犬として活動するコーギーは、しっぽに糞や尿が付着しやすい環境にあり、これが感染症や皮膚病の原因となることを防ぐために断尾が行われることがありました。
また、しっぽを切ることが狂犬病の予防になる、運動能力が向上するなどの迷信も存在し、これらの説がしっぽを切る理由となっていたのです。このような習慣は科学的根拠に欠けるものの、当時の社会や文化の中で広まったとされています。
コーギーのしっぽが切られる時期
コーギーのしっぽは、生後2~5日の間に獣医師が麻酔なしで行います。「麻酔なしなの?」と、思うかもしれませんが、この時期は、生後間もないため、麻酔を使うのにはリスクがあります。生後8日以降に断尾する場合には、麻酔に耐えられる時期まで待ってから全身麻酔で断尾を行います。
断尾の方法には「切断法」と「結紮法」の二つがあります。切断法では、獣医師がメスや外科的な器具を用いてしっぽを直接切り落とします。一方、結紮法は、しっぽの根元をゴムバンドで締め付けて血流を遮断し、結果として壊死させる方法です。日本では、獣医師が行う切断法が一般的で、医療的な環境で行われることが多いです。
なぜ、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークはしっぽを切るのにカーディアンは切らないの?
日本に多くいるウェルシュ・コーギー・ペンブロークは、しっぽを切る文化がありますが、カーディアンにはありません。これにはいくつかの理由が考えられています。
ペンブロークとカーディガンは、同じコーギーでも異なる地域の牧羊文化と発展の歴史を持っています。ペンブローク種はもともとイギリス南部で発展し、断尾が一般的な慣習として広まりました。これに対し、カーディガン種はウェールズのカーディガン地方が起源であり、断尾がそれほど一般的ではありませんでした。
また、断尾の慣習は、その地域の法律や文化、牧畜の方法に大きく影響されます。ペンブローク種が牧畜においてしっぽの怪我を防ぐために断尾されたのに対し、カーディガン種の地域ではそのような慣習が必要とされなかった可能性があります。
そのうち、しっぽなしのコーギーは見なくなるかも?
現在、コーギーが牧畜犬として仕事するケースは減少し、多くがペットとして暮らしています。そのため、断尾の必要も無くなってきました。
断尾は、犬がしっぽを使った感情表現を行う上での障害となり得ますし、手術による傷口が感染症の原因になるリスクもあります。国際的には動物の福祉を重視し「動物に不必要な苦痛を与えない」という方針が強化されています。そのため、多くの国で断尾が禁止されています。
日本では以前、コーギーの理想的な姿として「断尾されているか、しっぽの長さが5.1cmまで」という基準が設けられており、多くのブリーダーがこの規定に従って断尾を行っていました。しかし、国際的な動物福祉の視点から断尾を見直す動きが広がり、日本国内でも断尾を行わないブリーダーが増加しています。
この流れは今後さらに加速し、コーギーのしっぽをそのまま残すスタイルが主流になると考えられます。うちのロックは、ブリーダーからお迎えした子で、定期的にそのブリーダーのオフ会があるのですが、若い子たちは既に断尾されていませんでした。そのうち、しっぽなしのコーギーのほうが珍しくなる時代が来るかもしれません。
【まとめ】元々コーギーには「しっぽ」がある!断尾の理由や時期を詳しく解説します!
ほとんどのコーギーは生まれながらにしっぽを持っていますが、多くの場合は、生後間もなく、断尾されています。しっぽを切る習慣は、牧畜犬としての安全確保や、過去の税法による節税対策などの理由から始まりました。加えて、感染症の予防や、キツネと間違えられて撃たれる危険を避けるためなど、様々な歴史的背景が存在します。
現代では、ほとんどのコーギーがペットとして生活するようになり、牧畜犬としての役割を担うことは少なくなりました。そのため、断尾の必要性は大きく減少しており、動物福祉を重視する観点から、海外では断尾を行わないケースが増加しています。
この傾向は日本においても徐々に受け入れられつつあり、将来的にはしっぽのあるコーギーが主流となることが予想されます。